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警視庁から免許証の更新の連絡ハガキがきた。
もうそんな時期かと思いながら中を見ると、更新手数料2900円が必要と書かれていた。相変わらず、車関係の手数料は高額だ。手数料分でCDの新譜が買えると思うとうんざりさせられる。どうして住民票の発行程度の額で済まないのだろうか。
しかし、文句を言っても仕方が無い。更新を忘れると2900円では済まなくなるので、忘れないようにカレンダーに印をつけておいた。
交通安全協会は次のような活動をしているらしい。
私はバスを降りて、気合いを入れた。これから始まるゲームの内容は、交通安全協会に一銭も金を払わないで免許証だけを手にしてでて来るというものだ。何と言っても、払う必要のないものを義務であるかのように取り立てる団体が相手だ。油断すれば足元をすくわれかねない。
私はまず更新手数料の内訳を知りたいと思い、案内窓口に行って単刀直入に聞いてみた。
受付で申請用紙をもらい、記入事項を記入していったのだが、どれもこれもほとんど免許証に書いてある内容をそのまま書き写すのだった。一体何のためにこんなことをさせるのだろう。免許証を提出させれば(そしてもちろん免許証の提出も求められているのである)分かることではないか。そもそも、現免許証のデータはこちらにあるはずだ。わざと手続きを面倒にしているとしか思えなかった。申請用紙には、住所や氏名の変更があった場合のために新住所、新氏名の欄があり、これは分かるのだが、新生年月日という欄まである。一体、どういう場合に生年月日が変更になるのだろうか。
さらに驚かされたのは、写真を取ると言いはじめたことだ。免許証の更新のためには6ヵ月以内に撮った写真(3 × 3.4cm)を事前に用意しておく必要があり、それを申請書に張り付けて提出することになっている。その上、なぜまた同じ写真を撮る必要があるのだろうか。以前更新をした時には、確か持って行った写真をそのまま免許証の写真にしてくれていたはずだ。いつからこんな無駄なことをはじめたのか。
私が、これは無駄だから申請書の写真を使うように担当者に言ったところ、申請書の写真は申請のためのもので、免許用の写真はこれから撮るのだと言った。私がなおも文句を言っていると、では後はこちらでどうぞと言って、みどりの窓口なるところに案内された。またはじめから文句を言うのか、とうんざりしたが、気を取り直して再び不満を述べ立てた。窓口担当者とのやりとりは以下の通り。
予算がないとできないというのも役人特有の発想である。私は二度目に『予算』という言葉がでた時、「じゃあ、人を減らして予算を作ってください。」と言った。この辺りでやっと担当者の顔から笑顔が消えた。
私は話をしながら、手数料が高くなるのは当り前だと思った。
結局、これ以上の苦情は「承り箱」に出してくれということになった。言われた場所に行ってみると、住宅用の赤い郵便ポストにメモ帳のようなものがぶら下がっている。これも役人のいつものパターンだ。役人に文句を言うと大抵別の窓口を紹介され、最後には承り箱を紹介される。承り箱には意見と一緒に住所、氏名、電話番号までかかせるが、役人の側は責任者の名前すら明らかにしていない。利用者の言うことなどはなから聞く気はないのである。
私は「承り箱」に二枚の意見書を入れ、写真撮影をすませた。
(この日と次の日、二日連続で私の自宅に無言電話がかかってきた。無論、どこからかかってきたのかは分からない。)
講習会会場の入口の机の上に小冊子が山積みになっていた。そこにも担当者が一人いて、4冊の小冊子をセットにして受講者に渡していた。小冊子の内容は以下のようなものである。
受付の中は交通安全協会の出先機関のようになっていて、何人かの人がいたが、空席が多いのが気になった。まさか講習会会場の出入口にいた担当者達もここの職員なのだろうか。
免許証引き渡しのシステムは次のようになっていた。
第一に、免許証を受け取る人全員が、自分の番号が表示されるまで長時間(約一時間)に渡って掲示版を監視し続けなければならない。免許証引き渡しの準備が出来たのであれば、その免許証についてだけ名前を呼べばいいはずだ。なぜ掲示版を監視させて、その番号の引き渡し票だけ提出させなければならないのだろうか。
第二に、免許証を第三者にとられる可能性がある。このシステムでは、引き渡し票の提出と免許証の引き渡しが別の作業になっているが、引き渡し票を発行するのであれば、免許証は引き渡し票と引き替えにしなければ意味がない。
何でこんなおかしな手続きになっているのかと考えてみたが、どうやらこの手続きであれば、窓口担当者が楽ができるらしい。彼らは免許証が出来てきたら、あるいはもうじき出来るという連絡が入ったら電光掲示版のスイッチをいれると共に窓口を開ける。窓口には予め電光掲示版で指示した番号の引き渡し票しか入って来ない。引き渡し票が集まったら一旦窓口をしめて、引き渡し票と免許証を突き合わせて、引き渡し票のきているものだけを取り出す。最後に引き渡し窓口を開けて免許証をならべるというわけだ。この作業を何回(何十回)か行えば一日の仕事は終りらしい。これで一体いくらの給料をもらっているのだろうか。
何人かの人はまだ自分の順番でない時に引き渡し票を窓口に提出しようとして、窓口の担当者から「掲示版に表示された人だけですよ。掲示版を見てください。」と注意されていた。彼らは「あ、そうか」とか「すみません」と言って引き返していたが、私には彼らの方がずっとまともな手続きにしたがっているように思えた。
『編集発行 東京交通安全協会発行』
私はすべてのテキストの発行元を調べた。もらったテキストの発行元は次の通り。
後日、横浜で免許更新を行なった友人から、申請書の作成が面倒なので交通安全協会に協会費を支払って、書類の作成をしてもらったという話を聞いた。申請書の手続きの無駄な繁雑さにもちゃんと意味があったのだ。免許の郵送サービスにしても、いやがらせのような引き渡し手続きがあってこそ成り立っているわけで、まったく同じ構造だ。
彼らにしてみれば、会費として徴収しなくても金を集める方法はいくらでもあったのである。なんと言っても警察と組んでいるのだから。警察は手続きを面倒にして、無駄な仕事を作りだす。それをまるごと協会に流せば、協会は無競争で仕事を取ることができ、警察は天下り先を確保することができるというわけだ。例によって、金を払うのは関係のない我々だが、我々がいくら無駄ではないかと言っても彼らの協力関係は微動だにしないのである。
私は免許証を受け取って外にでた。道路を渡ってバス停にたどり着き、免許試験場の壁にぶら下がった垂れ幕を見た。それはまるで警察と交通安全協会の固い絆の象徴であるように思われたのだが...。
ありがとう笑顔でかわすよいマナー 警視庁・東京交通安全協会私はバスを待ちながら、敗北感の中でぼんやりとそれを見つめていた。[97/4/3]
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